
思い込みメガネ!!
コーチングアカデミー オンライン校の土橋桂子です。是枝裕和監督の作品「怪物」が話題になっています。脚本の坂元裕二さんがカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞し、作品がクィア・パルム賞を受賞したというニュースを耳にした方も多いと思います。この映画のロケは90%が長野県の諏訪地方で行われました。諏訪に暮らす私にとっては見慣れた景色の中で物語が進むため、たいへん身近な出来事として捉えることができました。今日は映画「怪物」をきっかけにあれこれ思う事をコラムにまとめます。
クィア・パルム賞とは:2010年に創設されたカンヌ国際映画祭の独立賞のひとつ。
LGBTやクィアを扱った映画に与えられる賞。
クィア:性的マイノリティを広範囲に包括する言葉。
捉え方は人それぞれ
映画「怪物」を観た多くの人が抱く感想のひとつが・・・乱暴なまとめ方かもしれませんが「物事の見方や捉え方は人それぞれ」に集約されると思っています。物事の見方や捉え方が人それぞれになる理由を大まかに言うと、一人ひとりの経験や環境、価値観や大切なもの・ことなどが違うから。結果、無意識のうちに持つ、自分なりの考え方、感じ方が違っているからです。別の言い方をすると、一人ひとりの思い込みが違うから。
私はそれを誰もが『思い込みメガネ』をかけていると言っています。
誰もが目に見えない『思い込みメガネ』をかけて世の中を見ている。そして多くの人は、自分が『思い込みメガネ』をかけている事に気づいていない。もちろんかつての私も知りませんでした。かなり頑丈な『思い込みメガネ』をかけていたにもかかわらず (-_-)・・・。
『思い込みメガネ』は自分の価値観を通してモノ・コトを見るため、自分にとっての理解や受け止めがスムーズになります。だから行動が早くなったり一貫性が出ます。その一方で、つい相手も全く同じものの見方をしていると錯覚し、自分の価値観で話を進めてしまい、「相手への行動や理解の押し付け」やその逆で「相手のやりたい事への否定」などが起こり、相手の選択肢を奪ってしまうなどの危険な側面もあります。『思い込みメガネ』をかけていることに気づいた今、私はなるべくその影響を少なくしようと心がけています。そのための方法の1つが「まずは聞く」です。
皆さんの中の『思い込みメガネ』はどんな形、色、レンズの厚みでしょうか♪想像してみてください。
まずは聞く:ある先生の思い出
「まずは聞く」で思い出す先生がいます。20年ほど前、次男が中学でお世話になった先生です。その当時、その先生からはたびたび家に電話がかかってきました。
『お世話になります。今日はお母さんではなく〇〇君と話がしたいのですが居ますか?』
息子が先生と話し終わったときに、私が『先生、何だって?』と息子に聞くと、返ってくる言葉の多くは『お母さんには関係ない!』でした。そういう時期もありますよね・・・。
話を戻して、先生の電話の背景はというと・・・
その当時もこの手間のかけ方や丁寧さに何となく凄いなぁと思っていましたが、今あらためて、ありがたい対応だったと心から感謝しています。
自分で判断をする前に、まずは当事者全員(傍観者も含む)の話を個別に聞く。
先生が行っていたことは、先生自身の自分の思い込みという『思い込みメガネ』の影響を少なくすることだったのではないかと考えます。何かが起こったとき、ここが悪い、この人がいけない、と判断する基準は『思い込みメガネ』が提供してくれています。しかしながらそれは『思い込み』に過ぎず『事実』ではないかもしれません。自分のこれまでの経験や二度あることは三度あるという決めつけが、これが悪い、この人がいけないと短絡的に決めつけてしまうかもしれません。そして、その決めつけが、間違った理解となり、間違った解決方法になり、そして間違ったことによって相手を傷つけてしまうこともあります。
このような『まずは聞く』というやり方は瞬間的な迅速な解決とはいかないのかもしれませんが、『急がば回れ、まずは聞いてみる』とすることで、『思い込みメガネ』を意識的に外し、事実を事実として受け止め、本来の判断や相手との向き合い方ができるのではないかと思います。
私は、今ならこの先生のやっていたことの価値が良~く分かります。(教職に関わる方に私の立場からこうあるべきと言っているのではありませんので念のため。あくまでも事例の1つとして受け取ってください。)
『まずは聞く』をばぁばもトライ中
私は4人の孫がいるばぁばです。今のところ全員男の子だと認識しています。(映画「怪物」を見た方には察していただきたいのですが、ここの表現にはこだわります。)
別居している孫たちをときどき預かることがありますが、ケンカになることもあります。孫たちのやり取りを聞いていると雲行きが怪しくなっていくのが分かりますが、できるだけ黙って見守ります。その場を離れることが多いので、見守るというよりも聞き守るという感じかもしれません。その場を離れる理由は、子どもたちがばぁば(大人)の顔色を伺うことが無いように(要は素直にケンカして♪ということ)。
誰かの泣き声(ほとんど年下組)が聞こえてきたら、ばぁばの出番 (^^)v
『さてさて、どうしてこうなったのか ばぁばには全然分からないから教えてくれる?』
という質問から孫たちの話をできるだけフラットに聞いていきます。基本的に、ばぁばは良い悪いの判断をしないよう心掛けています。話を聞きながら孫たちに良く言うフレーズは『言わなきゃ分からないよね…』『聞かなきゃ分からないよね…』など。
こうして、孫たちが自分の気持ちを少しずつ言葉にできるよう協力していきます。
ここまで読んで、そんな丁寧な対応はとてもできない!と思った方もいると思います。そう感じるのは当然です。私自身も「まず聞く」がいつもできる訳ではありません。大切なことは、できる時にとりあえずやってみることだと思って続けています。「まず聞く」をとりあえずやってみる。そこから何かが変わると信じているからです。
自分に置き換えてみて考えてみてください。
何かが起こった時に一方的に決めつけられて、解決の方向に持っていかれるのと、状況をまずは聞いてくれて、そのうえで解決策を一緒に考えてくれる、アドバイスしてくれる。あなたならどちらが良いですか?
便利な『思い込みメガネ』、『まずは聞いてみる』で時々外してみるのが良いかもしれませんね?
まもなく夏休み♪ご家族や大好きな人たちと共に過ごす機会が増える方もいると思います。大切な人の話をフラットに「まずは聞く!」やってみてはいかがでしょう(*^^*)
- あなたが『思い込みメガネ』を外したほうが良いと思う時はどんな時ですか?